写真:企業立地インタビューイメージ

福島県企業立地ガイド インタビュー

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インタビューVol.1 日本工機株式会社 白河製造所 常務取締役製造所長 寺島 実

interview

“恵まれた自然環境と人材力が魅力”

防衛用弾薬類をはじめ、産業用火薬類、防犯装置、 防災装置などの製造販売を行う日本工機株式会社。

1970年に福島県白河地方に製造所を移転して以来、 半世紀にわたって福島県に根差した企業として、 地域と連携しながら事業を行っています。

日本工機株式会社が福島県への製造所立地を決めた経緯や、福島県で事業を行う魅力について、 日本工機株式会社白河製造所 常務取締役製造所長 寺島実様にお話をうかがいました。

はやぶさ2号

日本工機株式会社について

事業内容や主力製品についてお聞かせください。

金属加工から火薬類製造・填薬・火工品類組立まで自社で一貫生産し、専用試験場で評価試験を行う防衛用弾薬類を主軸として、高精度で高い信頼性の製品を提供しています。また、それに伴って培った火工技術と精密金属加工技術をベースとして、産業用火薬類、一般産業用精密加工分野、防災防犯製品といった民生品事業にも展開し、多くの製品を生み出しています。

近年では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトに参加し、人工クレーター生成の衝突装置の開発を担当させていただきました。

写真:常務取締役製造所長 寺島 実

福島への立地を決めた背景

製造所立地に求めていた条件と福島への立地を決めた要因を教えてください。

火薬類製造には、十分な保安距離が確保できる広大な土地と、地元住民の理解が必要です。
移転先を検討していた当時、横浜市の戸塚工場周囲が住宅建設等で街並みが変わり、千葉県の興津工場は周辺の観光地化が進み、火薬類製造や工場拡張が難しくなっていました。

広い土地、用排水、労働力などあらゆる面から検討した結果、白河への工場移転が決まりました。火薬類製造には、工室を土堤に囲む法規制があり、当地は丘陵部を土堤に利用できることも大きなメリットとして決定要因になったと思います。また、標高が高いため高原気候で比較的湿度が低いことも、火薬類製造には好条件でした。

写真:広大な土地
白河製造所鳥瞰

福島へ立地して良かったことは何でしょうか?

アクセス面、自然環境面、人材面それぞれに良かったことがあります。

アクセス面については、白河に工場を移転した1970年当時の交通の便は決して良くはありませんでしたが、今では東北新幹線、東北自動車道が開通し、白河中央スマートICもでき、交通・物流の利便性は良好です。移転を決めた当時の役員は「先見の明」があったと自慢しています。

環境面では、先ほどお話しした広大な土地と、丘陵地形、高原気候が火薬類製造に適していたこと。そして、火薬類製造では、製品や設備の冷却に多量の水を使用するのですが、白河製造所は阿武隈川上流に位置しており、良質で豊富な地下水を利用できることです。

人材面では、県内に会津大学、日大工学部といった技術系の大学や、実業系の工業高等学校があり、優秀な人材に恵まれていると感じています。

図:福島の地図と工場の位置
恵まれたアクセスが魅力

福島県の魅力や福島県の人材の特長として感じていることがあれば教えてください。

福島県は自然豊かで歴史と文化があります。野菜や果物、魚も美味しく、地酒は全国でもトップレベルです。白河は東北の玄関口として関東圏に近く、利便性が良いのも魅力です。

福島の浜通り、中通り、会津の三地域にはそれぞれ独自の文化がありますが、「人」について共通して言えるのは真面目であるということではないでしょうか。

従業員の半数以上が福島県の出身で、特に高卒の採用はほとんどが県内の学生ですが、何事にも粘り強く、最後まで責任をもって取り組む人材が多いと思います。そのため、人材の定着率が非常に高いことも特長です。

また、当社ではラグビーや野球、テニスなどの「運動部」の活動が盛んで、それぞれ県内トップクラスの実績を持っています。そのため、運動部出身の学生が多く就職してくれることにもつながっています。

世界に誇れる技術を持った企業が多いことも、福島県の強みであると感じています。JAXAの「はやぶさ2プロジェクト」では、当社を含め県内の7つの企業が重要なミッションで参画しました。それぞれが得意分野で力を発揮し、プロジェクトを成功に導いています。県内の優れた企業と連携できることは私たちの刺激にもなり、また、「チーム福島」としての大きな可能性を感じます。

東日本大震災からの復興はまだ100%ではありませんが、福島県民の復興への努力は継続しています。その前進する姿は、私たちの力になっています。

写真:はやぶさ2衝突装置
「はやぶさ2」に搭載された、
小惑星表面に人工のクレーターを形成する「衝突装置」

行政のサポートや企業立地優遇制度についてはいかがですか。

当社の立地は50年前ですので、企業立地の優遇制度については大きく利用したことはないのですが、事業拡大の土地の支援や資格・認証の支援など、すでに立地している企業へのサポートも充実していると思います。
当社も、新事業に関する品質保証の認証取得にあたって、県の紹介でセミナーを受講させていただいたり、多大な支援をいただいております。
また、特に震災以降、知事が先頭に立って、福島県の魅力をアピールいただいており、福島県に立地している企業としては大変うれしく、心強く感じております。

今後について

今後の事業展開や展望についてお聞かせください。

当社の企業理念は「まもる技術を進化させ社会に貢献します」というものです。国内唯一の銃砲弾一貫メーカーの強みを生かし、「国をまもる」「地域社会をまもる」「家庭をまもる」ための技術をさらに磨いていきたいと思います。

写真:非火薬破砕薬「 ガンサイザー® 」
水蒸気圧を利用した非火薬破砕薬「 ガンサイザー® 」で固い岩盤を破砕

「技術」を核に福島県とともに前進する

特に力を入れていきたいことがあれば教えてください。

「技術」が当社の核だと感じています。技術を磨き続けることが発展につながります。
「はやぶさ2」プロジェクトは、当初は高すぎるハードルにも思われましたが、成功させることができました。そして、新たな挑戦をしたことが新たな技術の蓄積につながっています。

今後も新たな挑戦を続け、福島県が近年注力している航空宇宙、ロボット、エネルギーなどの最先端技術を多く取り入れ、新市場・新分野への商品創出をめざしていきたいと思います。

写真:常務取締役製造所長 寺島 実